悪に対抗するための悪だった?探偵の意外な歴史

探偵は正義の味方というイメージがあるかもしれませんが、その歴史は決して正義によって塗り固められている訳ではありません。

探偵の歴史は犯罪の中で生まれ、そこから現在のようなイメージへと変わっていったのです。

探偵は元犯罪者?

探偵という存在は決して正義の立場に居たわけではありません。ですが、探偵は悪という訳でもない、非常に複雑な立ち位置です。

現代社会における正義とは、法というものに置き換えても良いでしょう。それゆえに、正義とは法の番人たる側にあるというのが一般的な考え方であり、その法を破ることを目的とする人間を犯罪者、つまりは悪として捉えられています。

そして探偵というと、このどちらにも属している訳ではありません。世間一般では探偵というと、どちらか一方に偏りがちな存在と思われがちですが、社会から見れば、探偵は正義でも悪でもない、非常に独特な立ち位置にいることが分かります。

では、なぜ探偵はそこまで曖昧な位置に立つこととなったのか?

その複雑な立ち位置を知るうえで、探偵の歴史を見ていくことにしましょう。

 

探偵は悪から生まれた?

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探偵の成り立ちは決して褒められたものではありません。むしろ、その緊急的な必要性にかられて生み出された、急ごしらえの存在でした。

歴史の中ではじめて探偵が登場するのは17世紀のイギリス。

そのころ、イギリスは気候の悪化により農作物の収穫量が激減し、農村部では魔女狩りなどが行われるほどに不安が増加していました。

さらにそのうえペストが流行し人口が激減。宗教的な対立も悪化し、さらに16世紀から長引いた戦争のせいで、イギリスでは多くの犯罪者が町に溢れかえっていたといいます。

しかしこの頃、イギリスでは警察も人員が足りず、溢れかえる犯罪者に対応することが不可能となり、その結果、市民は独自に自警団を作り上げ、犯罪者から住民を守るために活動していたのです。これらの自警団が探偵の始祖とされています。

 

自警団の多くは犯罪者?

自警団の多くは実は元は犯罪者達ばかりでした。

当時のロンドンは産業革命の影響を受け、地方から出てきた労働者たちで溢れていたのです。そのせいで犯罪者が溢れていたのですが、その犯罪者達や無職者を使って、反対に犯罪者達に対抗しようとしたのが自警団のはじまりです。

もともと、粗暴で荒くれ者が多かった地方からの労働者達は仕事にもあぶれており、自警団として活動させるのは理に適っていました。毒をもって毒を制すという発想のもと、警察には頼らない民間組織による犯罪者への対抗策が出来上がっていったのです。

 

犯罪対策のための民間人の起用

イギリスで自警団が出来る中、フランスでは警察が民間人を犯罪調査のために利用するようになります。

18世紀のフランスは警察組織はまだ小さく、パリには警視庁すら存在しませんでした。そんな中でフランス中に溢れる犯罪者に対抗するには組織の人間だけでなく、犯罪調査に長けた優秀な民間人を雇って使用していたのです。特に元犯罪者を使用するのは、警察組織への利点はかなり大きいです。

元犯罪者は犯罪について詳しいばかりでなく、犯罪者の集団の中へと入りこむ潜入捜査も得意としていました。当時は科学調査もできず、手口だけから犯人を特定し、なおかつ本人の居場所についても一から探し出さなくてはなりません。となると、犯罪者と警察の間を自由に行き来できる元犯罪者の協力や、情報を売る犯罪者の雇用は必要不可欠だったのです。

フランスでは有名な探偵であり、元パリ警視庁長官であったフランソワ・ヴィドックも、もともとは脱走兵であり、懲役を経験した犯罪者でしたが、その犯罪歴が後の天才的な捜査能力にも大きく貢献していたのです。

 

日本では岡っ引き?

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日本でも探偵の元祖と言われている岡っ引きですが、彼らもまた元犯罪者が多かったと言われています。

岡っ引きは、正式には御用聞き、関八州では目明し、関西では手先や問口と呼ばれていました。彼らは岡っ引きは、軽犯罪者の罪を許すかわりに、公儀の役人の手下として行使されたいた人間たちです。彼らの仕事は犯罪を調べるための情報収集であり、犯罪者の共同体内部に通じた人間が多く雇われていました。

これは現代でいう所の潜入捜査官に近い役割を担っており、時として岡っ引き自身も犯罪を行ったり、恐喝まがいの行為を行ったと記録されています。

また、推理小説研究家の中には岡っ引きは私立探偵と同じ性格をもつものだとも言われているばかりか、職務を終えた岡っ引きが私立探偵の元祖となったとも言われているのです。

 

犯罪者を犯罪者が探偵の元祖だった?

探偵の歴史を紐解いていくと、その先には犯罪者達の姿が見え隠れしています。しかも、その犯罪者達は、横行する犯罪に対抗するために雇われた人間達だったのです。

特に、世界発の名探偵と言われるフランソワ・ヴィドックが元犯罪者であり、それゆえに警察に雇われて初代パリ警視長官にまで上り詰めた経緯を見ても、元犯罪者達がいかに現場で有効活用されていたのかが伺えます。

 

現代の探偵達は?

現代の探偵達は犯罪とは縁遠い世界の人間達が大半を占めます。

また、探偵業法においても、過去5年以内に禁固刑以上の刑に処された人間は探偵業を営めないと言われています。

しかし、私の知る限り、禁固刑以上の刑期を終え、厚生した元犯罪者が探偵業を営んでいるケースもいくつか見聞きしていますし、そんな探偵が非常に優秀な仕事をしているのも実際に目にしています。

探偵という仕事は信用が第一ですが、元犯罪者だからといって信用できないとは思えません。

きちんと更生し、社会復帰をしている人間なら、犯罪を犯していない人間よりも、罪を犯した人間のほうが探偵業に向いていることもあるのです。

 

まとめ

探偵の歴史を見てみれば、そこにはいくつもの位影を見て取ることが出来ます。そうした歴史の中で、探偵業は時代を経るごとによりクリーンに、犯罪とは縁遠い存在になりつつあります。

それも探偵業界の努力があってこそ、依頼者により信頼できるために、この業界は長い時間をかけて健全化を続けてきたのです。