知らない間にはまってる?クヒオ大佐事件に学ぶ結婚詐欺の歴史

今や多くの結婚詐欺がニュースで取り上げられていますが、それでも結婚詐欺についての知識が広まっているとはいえません。

結婚詐欺は、ネットの登場によってだれでも簡単に出来るようになりました。出会い系サイトを利用して男性を狙う女性もいれば、婚活サイトを利用して結婚したい女性を狙う男性などが横行しているのは、全て自分の姿を見せることなく詐欺を実行できるからです。

こんな時代だからこそ、結婚詐欺についての依頼を受ける探偵も増えています。しかし、詐欺を立証できても、被害金額を取り戻せるとは限りません。

そこで、今回は結婚詐欺の手口を学ぶためにも、歴代の結婚詐欺し達について詳しく知ることにしましょう。

『クヒオ大佐事件』

クヒオ大佐事件は、日本で最も知られている結婚詐欺事件です。

1970年代から90年代に掛けて発生したこの事件では、総額1億円以上もの詐欺被害が発生したのです。

あまりに有名すぎた事件であったため、映画化もされています。

堺雅人さん主演で、2009年10月に映画化もされており、第50回日本映画監督協会新人賞最終候補作品にまでなりました。

 

クヒオ大佐とは?

クヒオ大佐とは、結婚詐欺師である鈴木和宏が用いた偽名です。

鈴木和宏は第二次世界大戦中に北海道に生まれた日本人。中学を卒業後、自衛隊(当時の警察予備隊)に入隊した自衛官です。

しかし、鈴木和弘は自衛隊を離隊後、どういう訳か結婚詐欺を働くようになり、自らを「クヒオ大佐」と名乗り、数々の女性を口説き落として行ったのです。

 

クヒオ大佐の経歴

クヒオ大佐(本名:鈴木和弘)は、もともと顔が外国人のようなはっきりとした骨格や目立ちをしていたことを利用し、偽物の海軍士官を名乗って数々の結婚詐欺を繰り返していきました。

しかし、クヒオ大佐は英語をしゃべれず、海外の文化にも詳しくありません。そこで、次のような詳細なプロフィールを作り上げることで、次々と結婚詐欺を成功させていったのです。

  • 名前:ジョナサン・エリザベス・クヒオ(日本名は彼の本名)
  • 職業:アメリカ空軍特殊部隊パイロット
  • 国籍:アメリカ合衆国(日本国籍も所持する、いわゆる「二重国籍」)
  • 出身地・ハワイ
  • 両親 父:カメハメハ大王の末裔、母:エリザベス女王の双子の妹(映画では女王の妹の夫のいとこ)
  • 履歴:6歳でワシントン大学を卒業

10歳でミネアポリスの士官学校(実際には海軍兵学校ならメリーランド州アナポリス、陸士ならニューヨーク州ウェストポイント)の入学資格を得るが、体格が伴っていなかったために15歳まで入学を辞退。

その5年間でエール大学で弁護士資格を得て、東京大学法学部大学院で法学博士号を得る。

伯母の要望もあってケンブリッジ大学にも留学していた時期がある。

士官学校卒業後はアメリカ海軍に任官。のちに空軍に転籍し、ベトナム戦争や湾岸戦争などで常に最前線に赴く特殊部隊パイロットとして従軍。

 

…と、こうした経歴を作り上げたクヒオ大佐は、自分が生粋の日本人であることを隠しながら結婚詐欺におよびました。

 

詐欺の手口

数多くの結婚詐欺を成功させる人間は、総じて才能あふれた人間でもあります。

その才能の中でも結婚詐欺氏に重要だと言われているのが、詐欺をただの職業ではなく、人生をささげるに足りうるゲームだと認識することです。

クヒオ大佐の詐欺は、まさしくゲームそのものでした。単なる仕事ならば侵さないような犯罪ですら、クヒオ大佐は平気で繰り返していったのです。

 

女性の心理を見抜いた手口

クヒオ大佐の女性を落とす方法は一貫していました。まずは自らの経歴をそれとなく説明。足りない部分は相手の女性に補わせる形で、自らの生い立ちや職業を信じさせていきました。

詳細なだまし方について本人は告白しませんでしたが、主に次のような言葉をつかって相手を信じさせていたそうです。

  • アメリカから発行されている身分を示した公文書を示す。
  • 自分と結婚すれば、軍から5000万円の結納金が支給される。
  • 結婚すれば、イギリス王室から5億円のお祝い金が出る。
  • パイロット時代の写真としてジェット機の映った写真を見せる。
  • わざわざ目の前で無線機を取り出し、英語でしゃべってみせる。

しかし、こうした方法を使って女性を口説いていたものの、詐欺の手口の中には様々ながさつさも見られたといいます。

アメリカから発行されているにも関わらず、公文書はすべて日本語でした。また、本人も英語をろくにしゃべることが出来なかった為、わざわざ無線機でしゃべっても、会話は全て片言だったと言います。

 

クヒオ大佐の最大の技術

クヒオ大佐は驚くほど大胆な経歴を使い詐欺を行っていました。

しかし、がさつさは決して詐欺において不利益とはいえません。実は、クヒオ大佐最大の技術は、その大胆さと思い切りの良さにあったと考えられます。

クヒオ大佐がはじめに騙したのは自分でした。自らを騙すことさえできれば、あとは何とでもなってしまうのが詐欺の恐ろし所です。どんなにがさつなプランであっても、絶対的な自身を、迷いのない態度を見せつけられ、なおかつ自分を愛していると言われれば、多くの女性がクヒオ大佐の言うことを信じていたのです。

また、クヒオ大佐は決して自分勝手な男ではありませんでした。女性の扱いに長けており、女性が何を望んでいるのか熟知していました。この点も、クヒオ大佐が詐欺に長けていた最大の理由の一つです。

 

まとめ

クヒオ大佐は生涯の内に何度逮捕されようとも、出所後には詐欺を働き続け、最後に逮捕された年齢は70歳を超えていたと言われます。

好きは物の上手なれと言いますが、これは結婚詐欺も同じです。クヒオ大佐は詐欺こそが天職と思い、自らの半生を詐欺に投資したのです。

もしも、クヒオ大佐のような天性の詐欺士に狙われたとしたら、多くの女性は信じられないでしょう。特に結婚願望が強く、お金に弱い女性はなおのこと詐欺の良い餌食です。相手がただのお金目的の中途半端な詐欺しだとしたら嘘も見抜けるでしょうが、クヒオ大佐の詐欺士なら、きっと簡単に騙されてしまうでしょう。

詐欺士はお金だけを目的としておらず、自分に絶対の自身を持ち、女性の扱いに長けた男性が行うものです。この事実を知らないと、婚活パーティーや結婚サイトなどで簡単に結婚資金をだまし取られてしまいます。自分が完璧ではないこと、詐欺にあう可能性を必ず頭の隅に置いておきましょう。そうすれば、いくら相手がクヒオ大佐だとしても、そう簡単には騙されません。

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