オレオレは誰?特殊詐欺を見付けだせ?

オレオレ詐欺に代表される特殊詐欺は次第に減少傾向にあるものの、若者の貧困化と少子化により、バブル最後の逃げ切り世代と言われる高齢者を狙った特殊詐欺は手を変え、品を変えて現在も行われています。

詐欺を働くターゲットが高齢者に移りつつある理由は、高齢者が騙しやすい相手だからです。

 特殊詐欺は詐欺犯罪の中でも悪質で、認知に問題のあるような人物を狙ってカモにするようなこともあるのです。こんな悪質な犯罪が増えている今、探偵業界にも特殊詐欺に関する調査が入ってくるようになりました。しかし、特殊詐欺に関する調査は非常に難しいので、依頼前には注意が必要です。

オレオレ詐欺の調査

かつて私も一度だけオレオレ詐欺に関する調査を引き受けたことがあります。

ただ、結果からえいば、あまり良いものとはいえません。

依頼者は70代の女性とその家族で、典型的なオレオレ詐欺に引っかかっていました。

奪われた金額はおよそ100万円。

息子を装って電話をしてきた犯人の指示により公園にバックを持っていくと、待っていた人間がお金を受け取り、名刺を受け取ってそのまま別れたそうなのです。

 

警察の捜査が難航

オレオレ詐欺の場合、相手にATMで振り込ませることで金銭を回収する犯人が多いですが、この方法だと金の流れを追われることで足が付き、犯人逮捕につながりやすいです。

また、ATMに設置されたカメラから人相が割れることもあります。

しかし、犯人が被害者から直接金を受け取った場合は犯人を追うことが難しくなります。

唯一の手掛かりは被害者が見た犯人像のみですが、被害者は高齢者であるため当然正確な情報は望めません。

もらった名刺もでたらめ。

手袋をしていた為指紋は採取できず、結局、捜査は完全に行き詰ってしまったそうでした。

 

最後の頼みの綱

100万円が盗まれ、警察の捜査が行き詰った場合、普通の人なら諦めるでしょう。

なぜなら、探偵に依頼するだけでもそれに近い費用がかかります。

1000万円が詐欺で盗まれたとなればわかりますが、この金額だと依頼するだけ損です。

依頼者が探偵に調査を依頼した理由は、お金ではなく、被害者の女性のためでした。

女性は自分が詐欺にあい騙されたことで大きくショックを受けてしまい、それ以来自分を責めており、人間不信にもなり精神科にも通っているようでした。

そこで、おばあちゃんに元気になってもらいたいと、子供達が探偵に相談したのです。

 

難しい操作

当時、私が勤めていた関東の探偵事務所は規模が大きく、面談は相談員が、現場は調査員が担当する分業制でした。

したがって、私は依頼者とは直接話してはいませんが、相談をうけた担当の相談員が調査部にやってきて、かつての上司に確認を取り始めたことを良く覚えています。

 

「どうしてもって言って聞かないんですよ」

「しかしなぁ、その調査はまず成功しないぞ?」

「わかってます、私も説明してるんですが、ダメもとで良いって引かないんです」

「ダメもとって・・・調査費用が無駄になるだけだ」

 

漏れ聞こえる声を聞くうちに、どうやら詐欺調査の目的が事件の解決でないことを薄々察知しはじめました。

 

調査開始

調査指示書が私のもとに回ってくると、確かに、調査の目的は事件の解決ではないことがわかりました。

そもそも警察が徹底的に捜査した後ですし、もはや探偵に出来ることは残ってはいないでしょう。

それに、探偵には警察のような捜査権限を持ちません。

聞き込みにも限界があります。

にも拘わらず、指示書には殆どこれといって使えそうな情報はありません。

 

「これ、無理ですよ」

 

私が言うと、直属の上司は

 

「目的は報告書の作成だ」

 

と、やはり納得できない様子で答えました。

 

探偵の仕事の中には、稀にこのような「被害者を安心させるため」の調査があります。

つまり、結果よりも、徹底的な調査を行った結果を報告することで、依頼者を安心させるということがあります。

私としては、当時はこういう調査は意味のないものだと思っていました。

結果が全ての探偵の世界で、なぜわざわざ過程を重視して見せるのか?出来もしないオレオレ詐欺の調査など受けなければ良いのだと、担当の相談員の行動を非難したくなるような気持でいっぱいでした。しかし、そうして始めたオレオレ詐欺の調査は、思ぬ展開を迎えることになるのです。

詐欺犯の事務所

オレオレ詐欺というのはアパートの一室などを事務所としている場合が多く、まず私は近隣の不動産会社などに聞き込みを行いました。

理由は様々につけて聞き込みましたが、やはり結果は出ません。

そうこうするうちに、なんと偶然にも、私ではない別の調査員が、近隣の不動産店からの聞き込みで、似たような人物を見たというのです。

そこから足取りを追い、事務所と思わしきマンションに到着。どうせ違うだろうと思って、宅配便を装ってマンションのドアを開けてもらうと、確かに、中には数人の男性がデスクを構えている様子が伺えました。

その後、周辺を探索すると、どうにも怪しい車が。

かなり小さい車なのに、中には男性が二人。

両名とも私服でしたが、運転席のポロシャツ姿だけを確認。

借り上げた髪に、耳に柔道タコ。

間違いなく刑事です。

この件を報告し、探偵が調査をした結果を依頼者を通じて警察に確認してもらうと、確かにその場所にはりこみをしているので、現場に来ない様に探偵に伝えてくれとのことでした。

 

詐欺グループの逮捕と証拠不十分

この詐欺グループですが、その後逮捕されたという話は聞くことがありませんでした。

恐らく、礼状が下りることがなかったか、踏み込んでガサをかけても、乏しい物証が出なかったのでしょう。

詐欺に代表されるような知能犯罪者というのはとにかく頭がキレます。

また、IT関連のフロント企業を装おうような詐欺グループも多いので、証拠を掴むのはたやすいことではありません。結果的に、依頼者には報告書を提出しましたが。その後どうなったのか、私にはまだ謎のままです。