張り込み中に死にかける!?冬の車張り地獄

探偵の張り込みは決して楽なものではありません。

しかし、探偵をあまり知らない方だと「車の中に座ってるだけで楽だよね」なんて思っている方もいます。

しかしちょっとまってください。張り込みはそんなに楽なものではありません。むしろ、多くの新人探偵はこの「張り込み地獄」に耐え切れずに現場を離れていっているのです!

そこで、今回は探偵の面白い部分を知ってもらうために、張り込みがいかに地獄なのか私の経験を元に紹介させて頂きます。

冬の張り込みは地獄

探偵になって初めて「この仕事を辞めたい」と思ったのは、真冬の張り込みです。

実は私も皆さんと同じく、初めのころは張り込みなんて簡単だろうと思っていました。

それに集中力だけには自信もあったので、対象者を逃すことなく、ただ一点を監視し続ける作業もそれほど苦になりません。

そんな私でも初めて経験した真冬の張り込みには耐えきれなかったのには、次の理由が大きく関係しています。

車のエンジンを切る!

全ての張り込み場所でエンジンを切ることはありませんが、閑静な住宅街では張り込み中のエンジン音が周囲に聞こえてしまうので、あえてエンジンを切る必要があります。

張り込み中にエンジンを切るのは、どんな探偵社でも基本的な張り込み方法として新人に教えます。そのため、私もその教えを律儀に守り、いかなる場所でもエンジンを切って張り込みをしていたのですが、さすがに真冬にエンジンを切った時には耐えられませんでした。

なにせ、外は氷点下で、前日には雪が降るほどでした。しかも天候は曇り。日光の温かさすら期待できません。

新聞紙に包まる!

私も新人時代とはいえ、真冬の張り込み方法については学んでいました。

その方法とは、とにかく厚着をして、体を新聞紙でくるむという方法です。

ただ、これはあくまで大昔の技術です。私が新人の頃には、体の体温を守るための方法など幾らでもあったのですが、とにかく一度基本通りにやってみようと、ダウンジャケットを羽織り、その下に新聞紙を入れてみました。

すると、これが本当に暖かいんです。

ダウンを着ていた相乗効果もあったのでしょうが、新聞紙があるのと無いのでは段違い。ただ、動くたびにメリメリと音がするのが難点。やはり科学技術の進歩に逆らわず、次からはヒートテックを2枚位身に着けようと心に難く誓ったものです。

ホッカイロを使う

エンジンを切った社内の温度はみるみる内に低下していきます。

ヒーターを使おうにもバッテリー切れが怖いですし、ガスヒーターなんて車の中で使おうものなら、張り込みをしながら意識を失ってしまいます。

そこで張り込みをする前に先輩探偵からもらったホッカイロを使うことにしました。

冬の外仕事ではおなじみのホッカイロを身に着けると、確かに暖かい。特に靴に仕込んだホッカイロは冷え切った体を十分に温めてくるので「これなら張り込みも乗り切れる!」と思ったのですが………残念ながら、そう上手くは行きませんでした。

実はこの時、私が張り込みをしていた場所は、なんと「北海道」

東京都内から出張のため地方に飛んだ対象者が、会社のお金を使って不倫相手と遊んでいる可能性があるとの事から、北の大地に足を延ばしていたのです。

その時、天気予報で見た札幌周辺の最低気温は-15度でした。日中の気温でもマイナスを下回ったままでしたが、最悪な事に、張り込みは夜間にまで及んでしまいました。

夜になると、車内でホッカイロなんてまったく役に立ちません。しかも寒くてホッカイロを頻繁に交換するため、手持ちのホッカイロがあっという間に切れてしまいました。近くのドラッグストアに買い物に行こうにも、札幌の郊外だったせいで、ナビを見て付近にお店は見つかりません。

さらに夜になりはじめると、気温はどんどんと低下していきます。冬場は曇りよりも晴れの方が夜間の気温が下がりやすいらく、その日の夜は普段よりも気温が下がらなかったとか。

しかし、ホッカイロもついに切れ、寒さに震えはじめていた私からすれば「これ以上気温が下がるなら死んでしまう!」と、ついに無線で現場にいた別の調査員に告げました。

「すいません、寒いんでエンジン付けます!}

死にかけたのでエンジン点火!

これ以上体温が下がったら死んでしまう。

そんな恐怖にかられた私は、ついに車のエンジンを点火しました。これでよやく寒さから逃れられると思いつつも、エンジンを付けてしまった事で調査が失敗しないか不安にもなりました。

しかし、無線機からはこんな声が……

 

「え?なんでエンジン切ってるの?」

 

なぜエンジンを切るのかって、そりゃ周囲に警戒心を与えないためですよ!

と、いった言葉を一応丁寧に言ってみると、今度は無線機から笑い声が。

 

「いやいや!そんな事したら死んじゃうでしょ!」

 

そうなんです。

実は北海道みたいな厳しい場所で張り込みをしている探偵さんは、真冬に車のエンジンをめったに切りません。寒さで死にそうになるのはもちろんですが、北海道並みに寒い地域でエンジンを切って無線などの電子機器使うとあっという間にバッテリーが切れるそうなんです。(実際に私も経験があります)

ほかにもエンジンを切らない理由として、北海道の住宅の特殊な構造を教えてもらいました。北海道は冬になると外の温度が下がりすぎるので、室内の温度を逃がさないように、窓を2重、3重としている所が多いのだとか。そのせいで、家のま隣に車をつけるような真似さえしなければ、エンジン音は殆ど聞こえないのだと言います。

それならそうと、早く言ってくれれば良かったのに……

とはいえ、この経験をした後は、あまりにも寒い場所なら、迷わずエンジンを付けっぱなしにする様になりました。

張り込みは楽じゃないけれど……

この様に、探偵の冬の張り込みは決して楽なものばかりではありません。

ですが、やはり張り込みが好きなのは、そういう厳しさにやりがいを感じているからでしょう。色々と文句を言いながらも、そう考えている探偵は結構多いものです。