世間的には、探偵といえば数多くの修羅場をくぐり抜けているとお思いでしょう。
確かに、探偵がくぐる修羅場は、普通の人に比べれば多いほうです。しかし、その修羅場を抜け切り、ベテラン探偵になるまでは、常に緊張と困惑の連続。探偵も人間ですから、慣れるまでは戸惑うことも多いです。
そこで、今回は新人探偵が遭遇するであろう「これはヤバイ!」と思う修羅場についてご紹介しますので、これから依頼しようとする探偵という仕事の一旦を知ってもらえれば幸いです。
修羅場1『対象者との接近』
新人の探偵が初めて遭遇する危険なシュチュエーション。それはなんといっても対象者との急接近でしょう。
尾行をしはじめて慣れないころ、探偵はとにかく対象者にバレないように警戒しながら行動します。しかし、尾行が失敗するのを恐れるあまり、なぜか距離を離すことはできず、やけに近い距離で尾行を続けてしまうのです。
その結果起きるのが、予測外の行動による対象者との接近です。
対象者は目的を持って歩いていますが、ロボットのように無駄な動きをしない訳ではありません。道を歩いている最中に、気になる店を眺めることで足を止めたり、忘れ物を思い出し、急に今来た道を元に戻ることもあります。
こうなると、新人探偵はとにかく驚いてしまい、対象者に顔を見られないように急に脇道にそれたり、自分もなぜか今来た道を引き返そうとします。その結果、対象者に無駄な警戒心を抱かせてしまったり、対象者を見失うことが多くなるのです。
ベテラン探偵は?
予想外の行動により、対象者と急接近してしまった時、ベテラン探偵は慌てずに、
周りの人間に溶け込むことで問題をクリアします。
対象者が立ち止まったり、振り返って道を逆戻りする時、少なからず探偵の顔が対象者の視界に入ってしまいます。しかし、ここで急に隠れると警戒されるばかりか、対象者を見失うリスクも背負いますよね。
そこで、ベテラン探偵は周囲の人間に溶け込むことで自分の姿を消しながら、対象者を視界に入れたまま尾行をし続けます。
通行人の中でも、グループで移動している人間の後部についたり、誰かと同じ歩幅や速度、またはスマートフォンを見るフリや、電話をするふりをしながら歩くなどして、一般人の中に見事に紛れ込みます。こうすることで、対象者に近づいても怪しまれず、見事追跡を続行できるのです。
修羅場2『対象者を見失う』
新人探偵は常に緊張しながら尾行を続けます。緊張感を持つことは良いのですが、それも行き過ぎるとミスが多くなり、結果的に対象者を見失うことも増えていきます。
ただし、対象者を見失うといっても、新人がやりがちなのはほんの僅かな失尾(対象者を見失うこと)です。角を曲がったら対象者の姿が消えていたり、人込みの中で対象者が消えたと思ったら、次の瞬間に消えていることは良くあります。ただ、そんな短時間の間に、まるで煙のように姿を消すことはありません。そこから数メートル以内のどこかに、必ず対象者がいるのです。
しかし、緊張感が高い新人ほど、見失うことでパニックになり、近い場所にいるはずの対象者を探し出すことが出来ません。
ベテラン探偵の場合
僅かな失尾でも、新人探偵はパニックになります。
しかし、ベテラン探偵になればなるほど、失尾で動じることが減ります。むしろ、尾行の間には必ず何回かの小さな失尾が含まれると知っている為、冷静に捜索活動に出ます。
もしもビルの角を曲がって対象者が居なくなっていたら、それは近くのビルの中に対象者が入った証拠です。その瞬間に、もっとも近いビルのエレベーターホールを確認すれば、かなりの確率で対象者がボタンを押している所に出くわします。
また、人込みの中で対象者が消えたなら、それは気が付いた少し前のタイミングで、対象者が方向転換したと思って良いでしょう。なら、来た道を戻り、曲がってあろう周辺の店舗を調べれば、そこで対象者が食事しているかもしれません。
また、そもそも尾行を見失うのは探偵にとってはデメリットがあっても、対象者や依頼者にはさほどデメリットはありません。ただ調査を再度やりなおせば良いだけですし、失尾では対象者を警戒させません。それどころか、探偵はあえて失尾を繰り返すことで、難しい調査を成功させることもあるのです。
修羅場3『撮影ミス』
新人探偵がもっとも遭遇する修羅場は、調査中に撮影した映像が、まるで使い物にならなかったという事態です。
調査ではやり直しはききません。こんな事になっても困らないように、新人には撮影に関する厳しい訓練をさせたり、そもそも撮影をやらせずバックアップに回すか、先輩探偵のフォローのための撮影をしているものです。
それでも、やはりホテルの出入りなど、重要なシーンを押さえきれないと、新人はかなりショックです。特に夜間はミスが多いので、常に緊張しながら撮影を行うことになります。
ベテラン探偵の場合
ベテラン探偵は撮影ミスがそもそも少ないのが特徴です。自分にあった機材を使いこなし、どんな状況でも証拠を押さえられるのは、多くの修羅場をくぐってきたおかげ。中にはファインダーを覗かなくても、薄暗い夜間に対象者の顔のアップを撮影できる探偵も居る位です。
しかし、それでもミスが起きることを想定し、重要な場面では必ず撮影機材を2つ使うのがベテラン探偵の知恵です。
調査の最中、もっとも重要となる不貞行為の証拠(ラブホテルへの出入りや、浮気相手宅への出入り)を押さえる時には、必ず自分で操作するカメラの他に、車の中に設置したビデオカメラを使います。ビデオカメラは録画ボタンを押せば、そのまま何時間もカメラを回し続けることが可能なので、バックアップの機材として申し分ありません。
新人は修羅場を乗り越え、本物の探偵に
今回ご紹介した修羅場以外にも、新人探偵には数々の試練が待ち受けています。
しかし、現場は訓練の場所ではありません。調査は基本的に一度きり。たった一つのミスで、取り返しのつかない事態になることも珍しくありません。
だからこそ、新人は一つの壁にぶつかったら、すぐに同じミスを繰り返さないように、何度も訓練をして、次の調査に備えます。誰もがはじめからプロの探偵ではありません。どんな探偵でも、多くの修羅場を乗り越えながら、どんな調査でもこなす本物のプロになっていくのです。
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