毎年のように起きるストーカー事件では、警察の対応の甘さや誤った判断がメディアに取り正されています。
しかし、実際にはメディアに露出する部分など氷山の頂点に過ぎず、その下には警察の対応の悪さゆえに事態が深刻化した多くの被害者たちがいることを忘れてはいけません。
かといって、警察組織だけを非難したところで、被害者はなんの解決も得られません。
組織が変わるには多くの時間と費用と労力が必要であり、今自分が抱えている問題を解決するためには、それほど悠長に待ってもいられないのです。
そこで、今回は被害者が警察に相談する時に守りたいポイントをまとめてみたいと思います。自分を本当に守れるのはいつでも自分。その事実を忘れずに、強い気持ちで事に当たりましょう。
一度目の相談は遠慮せずに
ストーカー被害を受けた時、一度目の相談は電話で伝えることが多いでしょう。
なぜなら、誰でも警察に直接出向き、被害を訴えて大事になることを恐れているからです。
ストーカー被害も怖いですが、一度目の相談時には、被害者の恐怖心も低く、そのほかに起こる将来への恐怖心(警察に相談して加害者が逆上する、職場に噂が広がるなど)が被害者に大きく働きかけてきます。
警察には第一印象が大切
ストーカー事件を無事に切り抜けるためには、警察に被害が深刻なものであると判断してもらわなくてはなりません。
しかし、警察はまずストーカー被害に親身に対応しないと考えてください。
実際にはそうした警察官もいますが、多くの警察官はストーカーからの相談を厄介に思っているのも現実なのです。
現在、日本では年間2万件以上のストーカー事案が警察に相談されています。
その結果、実際に警察が対処するのは半数以下。
警告や接近禁止令となればさらに数は下がり、逮捕となると100件前後のレベルにまで落ち込みます。
想像してみてください。
貴方が警察官だとして、毎日の様に寄せられるストーカー被害相談の中に、ほんのわずかな深刻な事態が紛れていたとしたら、その被害を正確に見つけ出せる自信があるのでしょうか?
常に注意を払っていられれば良いでしょうが、勤務年数が上がり、油断が癖になりはじめたら、誰だって被害判定を誤ります。
人間に相談していることを自覚する
完璧なことなど世の中にはありません。
それは、警察官でも同じで、彼らも被害者と同じ人間です。
である以上、過度な期待をして、甘い相談でも深刻に扱ってくれるという希望は捨てましょう。
まったく話を聞いてくれない取引先に、必死に自社の商品をプレゼンするかのように訴えなければなりません。
でなければ、彼らは被害を甘く見て、次の相談でも判断を誤る可能性があるのです。
資料を作り相談に行く
ストーカー被害の相談は、皮肉なことにビジネス上のプレゼンと良く似ています。
警察は被害者の話を聞いて、自裁に危険な事案かを判断し事件かしますが、それまでは絶対に捜査はしてくれません。
証拠は全て被害者が集め、被害の状態を示す資料を作り、警察に出向いて担当の警察官に訴え、被害届を出すしかないのです。
証拠と資料はぬかりなく準備
前述の通り、現在の警察はストーカー事案に対して及び腰です。
証拠も資料もない状態で被害届を出しても、事件化までこぎつければ御の字ですが、下手をすると被害届すら受理されないかもしれません。
ストーカー被害の状況を記録し、紙に印刷して持っていくこと。
証拠品は全て集めること、持っていけないものは写真で撮影することなど、手を抜かず徹底的に行いましょう。
「殺される可能性」について
ストーカー事件にあって、殺される危険性あれば必ず伝えましょう。
ただ、警察は「わかりました」とはいいません。
なぜ殺されそうだと思うのかを聞いてくるばかりか、怠慢な警察官なら、被害の状況を指摘しながら、「そうとは思えないのですが」などと言い返してくるかもしれません。
第三者から客観的に被害を分析した結果、被害者がオーバーなリアクションをしていると判断されることは良くあることです。
ですが、被害者が遠慮をして、殺される可能性があると思っていても言い出さずに、なおかつ事件かを嫌う警察官の口車にのり、主張を押し殺してしまっては意味がありません。
被害の実態は被害者が一番良くわかっています。
激しい恐怖心があること、殺されると感じることを正直に訴え、例え怠惰な警察官であろうが事態の深刻さを分ってもらいましょう。
専門家と一緒に警察に出向く
ストーカー被害者を救う支援団体
日本には幾つかのストーカー被害を減らすことを目的としたNPO団体があります。
この団体はストーカー被害者を救うための専門家であり、警察に相談する時にも一緒に出向いてくれます。
また、団体では万が一の場合に備え、被害者のために独自にシャルターを保持していたり、ストーカー問題に強い弁護士などを紹介してくれます。
弁護士
弁護士もストーカー問題の専門家です。
特に警察との交渉では弁護士は心強い味方なので、雇えるようならなるべく早めに弁護士に依頼したほうが良いでしょう。
ただ、忙しい弁護士だと対応に遅れが出る可能性もあるので、その点は考慮してください。
探偵
ストーカー問題の最後の専門家は探偵です。
問題は、探偵事務所はストーカー問題というよりも、ストーカーの証拠を集める専門家であり、NPO団体のようにシェルターを保持していることもなければ、弁護士のように被害者の代わりに法的問題に関する交渉を行える立場ではありません。
ただ、ストーカー被害の証拠を集めることを依頼した場合には、被害者と一緒に警察に出向き、被害の実態を見た証言者として警察に動くように働きかけることが出来ます。
これが思いのほか効果があるので検討してください。
ストーカー被害が続いた時には、何度も通報すること
警察に相談しただけで被害が収まるケースは稀です。
殆どの案件では、相談したあとも被害が続いていくため、被害者は何度も警察に通報することになります。
どんな出来事でも通報すること
警察への通報を躊躇う人は多いですが、どんな小さな被害や、被害の前兆でもかまわずに警察に通報しましょう。
ストーカー事件では、通報の回数が多ければ多いほど深刻な事態として扱われやすくなります。
また、その段階で告訴ができないものも、被害の通報を積み上げることにより、ストーカー事件として立証し、事件として捜査が始まるかもしれません。
警察に遠慮をすることなく、何かあれば通報を繰り返してください。
前回も通報していることを伝える
110番をする時、繋がるのは担当の管区のセンターとなります。
ですが、別の管区で通報(勤務先や出先など)する時には、情報の共有が出来ていない可能性が考えられます。
最近ではまずありえないことですが、念のため以前も通報したことを伝えましょう。
連絡を待つように言われても、いつまでも待たない
警察は我々が思うより恐ろしいほど忙しい組織です。
被害について相談するため、探偵の警察に電話をして何分後に電話を折り返すと言われて、実際にはさらに時間が過ぎることは当たり前です。
そんな時は相手を待つ必要はありません。
被害者のほうから電話を入れることで、被害者が自ら優先順位の上位であることを示さないと、なかなか電話が返ってこないと思ってください。
被害の証拠は絶対に破棄しない
ストーカーから受けた被害は全て証拠となり、警察に渡すことで被害者に有利に働きます。
どんなものでも破棄せず、必ず保管してください。
自分で持てない場合
被害者に送り付けられるプレゼントは、死んだ動物の死骸や呪いのような文章など、大抵が恐ろしいものばかりです。
こんな証拠を自宅に保管するだけの余裕は、追い詰められたストーカー被害者には残っていません。
ですが、証拠品は一々自宅に保管しなくとも、警察に提出すれば署で保管してもらうことが可能です。
また、読むことや見ることが躊躇われるようなストーカーからの写真や手紙は、封を開封せずに警察に手渡せば、あちらで中身を確認してくれます。
警察に提出できない場合でも、被害者支援を目的とする団体職員や弁護士、探偵などに頼めば、見たくモノも代わりに見てくれるでしょう。
メールやSNSの証拠はサーバーに連絡
メールで送られてきたストーカーからのメッセージや、SNSやブログに書き込まれた侮辱的な言葉や脅迫文などは、警察への相談と共に、運営するサーバー側に連絡し、書き込んだ人間を特定してもらいましょう。
ネットで書き込まれた文章は必ずログが残ります。
サーバー側はログを調べることで、消された文章でも書きこんだ相手を特定することが可能です。
警察でもサイバー犯罪対策課が書き込んだ人間を特定してくれるでしょう。
ただ、相手がネットワークについての知識が豊富な場合はそうとは限りません。
様々なサーバーを経由しており、その中にログを保存しない悪質なサーバーがあった場合、その時点で痕跡を追跡することがほぼ不可能になります。
また、公共のネットワークの使用や、インターネット喫茶などを使われた場合も同様の現状が起得ます。
最近はネットワーク使用者の透明化が図れ、サイバー犯罪の検挙率も上がってきましたが、いまだ完璧な対策は取られていないので注意しなくてはなりません。
携帯電話番号を勝手に変えない
警察に相談したあとは、携帯電話番号を勝手に変えてはいけません。
もし番号を変えると、警察からの連絡を受け取れなくなります。
携帯を2台もつのが理想
ストーカー被害を受けて携帯を変えると、電話による被害は防げますが、そのぶん得られる証拠が減ってしあみ、告訴が難しくなるでしょう。
出来ればストーカーからの受信専用の古い携帯の他に、もう一台新しい携帯電話を契約し、その番号を警察に教えておくのが理想です。
安い携帯でかまわない
ストーカー被害にあい、新しい携帯を契約する時には出来るだけ安価なものを選びましょう。
一時的な使用で収まる場合には、高価な形態は無駄な出費となります。
また、その費用がなるなら、他のストーカー対策(監視カメラの設置など)にさく方が効果的です。
同じキャリアはお勧めできない
ストーカー被害の実態を直に見た人間としては、以前の携帯電話を同じキャリア(通信会社)で2代目を購入するのはお勧めしません。
ストーカーは被害者の引っ越し先を調べるために、本人が使用していた携帯電話からキャリアを調べ、オペレーターに電話し、なんとかして本人の情報を引き出そうとします。
同じキャリアで2台目を契約した場合、偶然2台目の携帯の存在と番号、そして新たな住所を知られる恐れもあるのです。
住所は以前ものを使用
引っ越したからといって、わざわざ契約時に新しい住所を記入したり、引っ越したあとに2代目の携帯電話の契約住所を変更しないでください。
前述の通り、加害者は通信会社から情報を引き出し、新たな引っ越し先を調べようとします。
2台目の携帯だからと油断せず、しばらくは以前の住所のまま契約を続けてください。
ストーカー規制法とDV防止法について学ぶ
最後に、被害者の方は必ずストーカー規制法について学び、利用できる制度なども調べておきましょう。
また、同時にDV被害を受けている可能性もあるので、DV防止法についても調べておいてください。
警察が全ての説明をしてくれるとは限らない
残念ながら、警察の全ての人間がストーカー規制法や関連制度について詳しいわけではありません。
シェルターの利用や退避のための一時金の支給、防犯グッズなどの提供などの諸所の制度を忘れてしまっていたり、うっかり紹介し忘れる事もあります。
被害者が率先して制度の利用を訴えたほうが、警察ばかりをあてにするよりも、より自分の身を守れると思っておいてください。
まとめ
警察と被害者というのは、本来は守り、守られるという立場です。
ですが、実際には黙っていても警察が守ってくれるほど警察は上手く機能していません。
被害者が率先して行動し、警察に動いてもらえるように働きかけなければ、現代のストーカー事件の多くは解決できません。
欧米では被害者のことを『サバイバー(生き残る人)』と呼ぶことがあります。その理由は、被害者はけっして弱者ではないからです。生き残るために強い心をもち、警察と渡り合いながら、目の前の問題を解決していきましょう.
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