実録行方調査:消えた真面目なサラリーマンを探せ!

日本で行方不明者の捜索を民間で請け負う場所は、今では探偵業しかありません。

しかし「人を探す」だけならまだしも、自殺や事故の危険性がある人の場合はもちろん蛍雪が捜索活動を行ってくれます。

それに、2000人、3000人と警官が動員された捜索活動ですら、本気で消えた、もしくは消された人間を探し出すのは難しいものですし、警察ですら捜索できないものを、たった数人の探偵事務所が探し出すことは不可能に近いかもしれません。

ですが、警察が2000人、3000人と動員することは滅多に無く、多くの行方不明者は警察の定める捜索規定の範囲に入らず、警邏中に偶然発見されるのを待つのが関の山です。

だからこそ、探偵業はそんな人たちの為の受け皿としての機能を果たすべく、浮気調査よりも数段難しいと言われる行方調査に挑みながら、時には警察に学び、時には自らの力でそのノウハウの日々蓄積し続けています。

相談内容

今回ご紹介する相談者は、北海道にお住まいのKさん(女性:40代:パートタイム)

Kさんが捜索を依頼したのは、Kさんの旦那さんであるOさん(男性:40代:会社員)でした。

KさんがOさんの失踪に気が付いたのは3日前の事。

その日はいつも通り仕事にいったはずのOさんでしたが、出勤時間をとうにすぎた昼頃、会社からKさんの自宅に電話が入り「Oさんがまだ出勤していません、そちらにおられますか?」と尋ねられたそうです。

その後、会社の人々と手分けをしながらOさん行方を探すも発見できず、その夕方に警察に連絡を入れました。

しかし、遺書も無く、Oさんの行動の前後に死の不安が思わせるような言動が無かった事。さらに、Oさん自身健康的な肉体であり、事故死の可能性はなく、当然のごとく犯罪に巻き込まれた可能性もなかった為、特定行方不明者(警察が本格的な捜索を行うライン)に認定されなかったため、警察の積極的な捜索は期待できませんでした。

そこで、探偵社に依頼をし、なんとかOさんを探そうと考えたのです。

依頼内容

Kさんの依頼内容はOさんの捜索でした。

しかし、探偵社に相談された時には大変取り乱している状態だった為、詳しい状況や捜索が可能か判断するための情報や契約などを行うために、探偵社の相談員が直接自宅に訪問することになりました。

その結果、調査が決定。

相談員が持ち帰った情報は以下の通りでした。

【基本情報】

  • 年齢:40代中盤
  • 職業:建設会社社員
  • 趣味:読書とゴルフ
  • 性格:神経質で真面目

【失踪時の状況】

  • 遺書:無し
  • 持ち出し品:衣服数点、財布、携帯電話、車

なお、失踪前の状況を詳しく聞いていく内に、行方不明になるひと月前にOさんが昇進している事が判明しました。

また、調査を行う前にOさんの書斎を見させてもらいましたが、室内は大変整理整頓されており、勉強熱心である事も判明。ビジネス書や自己啓発本も多数室内にありました。

しかし、これらの事から私はOさんの失踪が、明らかに昇進にあると判断しました。

 

昇進というのは一見して喜ばしい出来事であり、失踪とは無関係、むしろ失踪をしない条件の様に思う方も居るでしょう。

しかし、昇進によって立場が上がると、その分プレッシャーが重く伸し掛かり、人によっては精神的なトラブルを抱えやすくなります。

そして、そのトラブルは大変責任感があり、神経の繊細な人ほどのしかかり易くなります。

今回のケースでいえば、Oさんの室内の状況から本人の神経質さが伺えましたし、自己啓発本やビジネス本を多く読む人物ほど真面目ですが、その裏返しとして自分に自信が無い兆候でもあります。

そして決定的なのは、自己啓発本やビジネス書を多く読むほど解決したい仕事の問題や自分の問題があったにも関わらず、ご家族がOさんの悩みについて何も知らないことでした。

これらの事から、私はOさんにも万が一の可能性があると判断し、早急な発見のため調査を開始しました。

調査開始

私が行う行方調査の最初の行動は、まずはビラを作る事からです。

この点は警察も多くの探偵社も変わらないでしょう。ビラを作成することにより、聞き込みをしやすくなりますし、ネットでの情報提供を促す際にも非常に使えます。

続いて行うのが、対象者の部屋をよく確認することです。

多くの失踪者は行き先を決めずに飛び出す事はありません。室内に必ず何らかの手がかりが残されており、そのアイテムを手に入れられれば、闇雲に探すよりもよりスピーディーに調査を展開できる可能性を秘めています。

 

そして、今回のケースでは運よく室内に残されたパソコンの履歴から行先と思わしき場所の情報を入手することが出来ました。

これは本当に運の良いことで、本気で姿を消すつもりの人間なら、履歴を完全に削除したり、中にはパソコンごと壊してしまうような人も居るからです。

そして、行先と思わしき場所周辺のホテルにビラをもって聞き込みを行った結果、入れ違いで宿泊先からチェックアウトしたOさんの情報を入手。

私たちは急いで付近の駅に向かうと、ちょうど駅の案内板を見ていたOさんを発見することが出来ました。

調査結果

調査の結果、発見できたOさんを追跡しながらKさんに現場に来てもらい、探偵達が見守る中、KさんはOさんと再会する事ができました。

その後、Kさんからの話によれば、Oさんが行方不明になった理由は仕事のプレッシャーが原因だったそうで、「仕事に行く最中に突然何もかもが嫌になって、前から見たいと思った景色を見てから死のうと思っていた」と告げたそうです。

「仕事のプレッシャーなんかで死ぬ方がおかしい」と思うかたも居るかもしれません。そして、私自身も確かに、プレッシャーを跳ね飛ばしながら頑張るほうが自分らしいと思っています。

 

しかし、世の中は強い人間ばかりではありませんし、頑張れば頑張るほどに自分で自分の首を絞めてしまう人もたくさんいます。

そして、そうした人々が姿を消す時、必ずだれの頭の中にも「死」が過ります。

なぜなら、死は彼らにとって甘く甘美な救いの手だからです。

そんな彼らを探し出すのは簡単ではありませんし、私自身も多くの失敗を繰り返してきました。

しかし、それでも挑み続けた理由は、人の命を救うのは簡単ではないからです。