不倫とは、浮気とは別の意味で使われる事の多い言葉であり、主に婚姻関係にある男女が別の異性と長期間に渡る恋愛関係を維持する状態を指していると考えられています。
しかし、この言葉が出来たのはつい最近のことで、そこには日本の社会が急速に自由恋愛化の動きを見せてきた事と、男女の関係の多様性が認められつつある時代背景が大きく関係しているのです。
不倫は犯罪だった
文明開化前の江戸時代の頃、不倫と同等の好意は『不義密通』と称されていました。
この法律が定められたのは鎌倉場時代の頃、あの有名な御成敗式目の大34条に不義密通に関する処罰が規定されており、その内容は所有量の半分を没収し、職務を降ろされるという大変厳しいものでした。
ただ、この御成敗式目は武家諸法度といわれる武家の規律を守るための制度であり、民間人の間には殆ど広まりませんでした。
しかし江戸時代に入り、婚姻関係にある男女が別の異性と密通(密かに通じ合い性的関係を持つ)した場合には、厳罰として立て看板を立てられた橋の上に、密通した男女が晒しものにされたり、時には死罪に処されてしまうような思い判決が下る時もありました。
ただ、このような厳しい処罰を受けたのは妻とその密通相手の男性のみであり、夫が他の女性と通じた場合にはお咎め無しとなる事が多かったのです。
この制度は明治時代に入ると『姦通罪』と呼ばれる罪となり、今度は刑事罰として罰金や禁固刑が言い渡されることになるのですが、ここでも刑罰を受けるのは妻側のみで、夫側は殆ど罪を受けることがありませんでした。
女性の社会進出
しかし、女性の社会進出が始まると、この姦通罪そのものが女性差別に当たるとして撤廃の動きが出始めます。
同時に、男女がお互いに自由に恋愛を行い、その恋愛活動の中で結婚相手を探す行動。所謂『自由恋愛思想』が生まれはじめた為、離婚数も次第に増えていきました。
その結果、不倫は民法770条における『不貞行為』という形に代わり、離婚が出来る重要事項、または慰謝料請求を出来る権利を得れる要因として法律で定義されるようになったのです。
不倫の流行
そのような時代の移り変わりが激しかった高度経済成長期、作家である三島由紀夫が書いた小説『よろめき』で男女の不道徳な恋愛模様が人気を博し、婚姻関係にある男女が別の異性と恋に落ちるさまを「よろめき」と呼びはじめました。
実はこの頃も不倫という言葉自体は存在していたのですが、男女関係の様子を表すためには用いられておらず、主に非道徳的、もしくは反社会的な行動やその様子を示す意味で使われていたのです。
その後、男女の不道徳な恋愛を描く物語は大衆からの支持を得はじめ、1983年に放映された『金曜日の妻たちへ』というドラマの中で、ついに不倫という言葉が初めて異性間の関係や様子を表すために用いられました。
当然、この時使われた不倫という言葉は、男女の非道徳な恋愛模様を表現するために用いられたため、不倫=非道徳な異性関係という図式が広まり、今では浮気よりも、さらに非道徳的な男女関係を表す事場として用いられはじめたのです。
不倫は女性に何を与えたのか?
不倫という言葉は女性にとってはとても魅力的に移る様で、三島の『よろめき』や『金曜の妻たち』にしても、どちらも女性達からの圧倒的支持によって支えられています。
この行動原理については、科学的には未だ謎の多い部分とされていますが、一説によれば、女性も男性と同じく、本来はより優れた異性を求めるための活発な行動を行いたい願望があるものの、リスキーな行為を避ける習性があるため、自身の願望をフィクションに投影して欲求を満たしているのだとも言われています。
つまり、女性にとって不倫はリスキーであるから行ってはならない為のもので、もしもそのリスクさえ無くなれば、いつもで不倫をする可能性があるという事です。
この点を勘違いして、妻の不倫に気が付けない男性が多いのは嘆かわしい事ですが、すでに妻は夫の為に尽くすというような全時代的な男女関係は過去の遺物となっていることに早めに気が付かなくてはなりません。
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