浮気調査から見える男女の愛

私達が生きている生活空間の外側、まるで非現実的な世界ともいえる探偵社会では、男女との修羅場と言われるような非日常的光景こそが日常で、まるで密度の違う男女関係を日々見続ける事になります。

そのような男女関係を見続けていれば、自然と次の様な考えが浮かぶようになるのですが、それこそまるでロマンチストじみた、はなはだ夢見がちな疑問とも言えるかもしれません。

それは、『人は本当に人を一勝の間愛し続ける事が可能なのか』という答えの無い疑問です。

仮に、私達が一生の間一人の人間のみを愛せる事が可能だとして、それは法律や人間の道徳心というルールで縛られた者にすぎないのか?

それとも、それこそ誰もがフィクションの中でしか見た事の内、理想的な純愛がなせる業なのかは探偵にも解りません。

それでも、もしもそんな事があれば、きっとこの目で見てみたいと思っているのは、男女の愛情の裏に潜む裏切りや憎しみを常日頃から見ている探偵きっての儚い願いなのでしょう。

相談

今回の相談者はすでに60歳になる女性。現在は専業主婦でしたが、同年代の夫が定年退職するまで近所のスーパーでパートとして働き続けており、現在は年金暮らしをしているとのことでした。

子供は一人もおらず、家族は夫一人きり。

しかし、その旦那さんが体を壊して入院してしまい、家に一人きりになった時に夫の寝室を掃除していると、ふと妙な手紙を見つけてしまったといいます。

その手紙には、まるで恋文のような内容であったとのことで、依頼者はすぐに夫の浮気を疑いましたが、入院中の夫を問いただす事もできません。

しかし、1人で悩みを抱え続けることができなかった依頼者は、ついにこの手紙の人物についての調査を決意し、問題解決のため探偵社に相談に訪れたのです。

 

依頼内容

今回の対象者は手紙の主である女性と思わしき人物で、年齢不詳、性別不詳、ただ住所と名前だけははっきりとしているため、その住所地に直接出向いて対象者との関係について直調(調査対象者に直接聞き込みを行うこと)を行うことになりました。

相手が女性である事と、浮気問題に関するデリケートな聞き込みを行うため、探偵社の人間は対象者の友人に扮して聞き込みを行う予定となったため、現在本人が入院している事と、本人との関係についてどこまで迫れるかが勝負所となりました。

 

調査開始

手紙に書かれた住所地は、郊外の住宅地にある小さな木造アパートの一室でした。

その部屋を訪ねると、中から60代前後と思われる小奇麗な女性が現れ、私を出迎えてくれました。

私は対象者の友人と名乗り、本人が現在入院中であることを多少尾ひれを付け(実際には死に関係するものでは無かったものの、危険な状態にあると偽り)依頼者から預かった手紙を指しだし、事の次第を離してもらえるかどうか尋ねました。

すると女性は、少々迷った様子はあったものの、次第に重い口を開き、手紙の事と、対象者の関係について喋りはじめたのです。

 

調査結果

調査の結果、女性と対象者は学生時代からの友人で、かつてはお互いに相思相愛の間柄であったと言います。

しかし、二人が恋愛関係に発展することはなく、その前に依頼者と対象者がお見合いにて結婚。その後はお互いに連絡を取り合わなくなったのですが、ある日突然対象者からの手紙が家に届いたそうでした。

その手紙には、お見合い結婚をした事をわびる文面と、未だにその女性が忘れられない事、しかし妻の事も愛しており、どうしたら良いのか解らないという内容がしたためられていたそうです。

女性ははじめ、なんて身勝手な内容だと手紙を返すのを躊躇いましたが、自身も未だに対象者への好意があることに気が付き、結局返事を返してしまった結果、それから約30年間もの間、両者は文通のみの不倫関係にあったそうです。

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この報告書を渡した後の依頼者の動向については不明なため、この女性と対象者の関係がどう変化したのかは解りません。

ただ、私達が一人の人間を一生愛することがいかに難しいことなのか、また、そのために人を傷つけずに居られることなど、きっと誰にもできないのだと知るに至った、大変貴重な体験だったのは間違いないでしょう。