昨今、大手週刊誌のスクープが連日の様に世間を騒がせています。
春先から大物芸能人の不倫報道、そして贈賄疑惑、さらに元殺人犯の現在を写真付きで追い、そして最近では高学歴芸能人の経歴詐称を世間に公表しました。
ただ、この点について、元探偵として勉強になる部分もあれば、これはどうなのだろうかと思ってしまう部分もあり、かなり引っかかる所が多いです。
そこで、今回は週刊誌の取材と探偵の調査の違い、さらには探偵から見て週刊誌にどの様な問題があるのかについて詳しく見ていきたいと思います。
週刊誌と探偵の共通点
週刊誌の記者も探偵も、調査を行う点ではかなり似た仕事をしています。
例えば尾行ですが、これは探偵も週刊記者もその方法にあまり変わりはありません。数名体制で尾行を行いながら撮影をします。
都心部での活動が大半を占める週刊誌の尾行はバイクが基本となり、車も使用します。撮影に関する能力では、週刊誌側が圧倒的に上です。
探偵は調査をメインとし、撮影は訓練として学びますが、週刊誌のカメラマンは、もともとカメラマンとして専門的な教育を受けてきた人達です。その分、尾行や張り込みに関しては弱い部分もあるかもしれませんが、とにかく撮影能力に関しては、探偵よりもはるかに抜きんでています。
続いて聞き込みです。週刊記者と探偵は双方、情報を得るために聞き込みをしますが、その方法は大きく異なります。
探偵における聞き込みとは、調査の依頼をもらい、対象者を探したり、その行動について調査をするために一般人に対して聞き込みを行う事が殆どです。
一方、週刊誌は先に聞き込みからネタを掘り出し、そこから取材に入ります。
当然、その中でも聞き込みは行われますが、その相手は一般人となることは少なく、殆ど取材対象者の周辺にいるが¥業界関係者となります。
また、他の報道機関を出し抜くためには、聞き込みの相手をホテルなどに囲ってしまうこともあります。この様な独特の方法を取るのは、週刊誌ならではと言えるでしょう。
最後に張り込みですが、これは探偵も週刊記者も殆どありません。
探偵が思う週刊誌の問題点
元探偵が見て、週刊誌に感じる問題点は、やはり情報を公に公開するという姿勢そのものです。
ただ、これは探偵という職業に守秘義務が課せられているからでもあります。
探偵の職業に守秘義務が課せられていない場合、その仕事は週刊誌と大きく異なることはありません。
むしろ、守秘義務が無ければ、探偵社は自然と大きな利益を得られる可能性がある大物のスクープに走り出すでしょうし、その流れは抑えられません。
ただ、やはり依頼者の為に仕事をするという意識がある探偵には、得られた情報を個人を特定できる状態で公開してしまう姿勢に疑問を感じてしまいます。
そんな事をすれば、いたずらに相手を社会的に抹殺してしまう事になりはしないかと、常に疑問に感じてしまいます。
ただ、それによって私達の好奇心が満たされているのも事実です。
また、不倫報道などがあった場合には、それを元に議論が活発化することもあるので、一概には悪いとは言えません。多くの人の興味関心を煽るためには必要な事ですし、それで利益を上げるのが報道という商売なのですから。
調査方法への疑問
探偵の場合の調査…すなわち、報道機関でいう所の取材には、その方法をかなり疑問視しなくてはならない面もあります。
例えば、ベッキーさんの不倫事件で使われた写真の内、LINEから流失したと思われる画像の入手方法も問題です。
ベッキーさんが自ら撮影している様子から、川谷さんの奥さんではなく、ベッキーさん本人の携帯から流出した可能性もありますが、その入手方法は未だ明らかにはされていません。
また、同じ事件の報道の際に、川谷さんの実家から出てくるベッキーさんと川谷さんを撮影した社員の角度はかなり問題です。
こちらの写真ですが、マンションらしき場所の廊下を歩く川谷さんたちを斜め上のアングルから押さえています。
この角度から抑えるには、隣の建物に入り込むか、ドローンを使うしかありません。その場所が一体どんな場所なのかは分かりませんが、もし空き室を抑えていなければ、勝手に隣のビルやマンションに入り込むなどした住居不法侵入の可能性もぬぐえません。(空き室を手に入れたのなら、機材なども状況に合わせたものを使用できたはずなので、ここまで画質が荒くなるとも思えないのです。)
また、ショーンK氏の過去の経歴をどの様に調べたのかも分かりません。
調査の手法が明かされない世界では、法律のグレーゾーンを歩くことも多いですが、もしかしたら、そこを踏み越えて、違法行為に手を染めた可能性もぬぐえません。
こうした細かい点は、一般の方々は見逃しがちですが、元探偵という目線からど、どうしても気になってしまいます。
ただ、週刊誌に合法性を求める方が、非常識といえば非常識な気もしますね。
週刊誌の取材方法にも合法性は求められるべきなのか?
週刊誌といえど、やはりその取材方法に問題が無かったか問われるべきかもしれません。ただ、週刊誌は情報の公開でプライベートの侵害や肖像権、または様々な人権を侵害することを前提としている様な世界です。
過去には報道の自由を掲げる報道機関側と彼らに追われた人間が訴える人権問題に関する法廷闘争が幾度と無く繰り広げられてきています。
そうした世界に身を置いていると、時折魔が刺してしまうのか、それとも法律に関する知識が現場の人間に不足しているのか分かりませんが、時々違法な手段を取ってしまう事もあると聞きます。
また、この点は探偵業界も同じです。結果を得ようと焦れば、探偵も同じように違法行為に走ってしまうものです。調査も取材も、常に法律のグレーゾーンを歩む作業なのです。
まとめ
最近は大手週刊誌の目覚ましい活躍に対して、多くの人達が危機感を持っている様です。
ただ、その技術や手法、そしてスクープをものにするテクニックや情熱には賛辞を贈らなければなりません。
しかし、あまりにも行き過ぎた取材や調査は、簡単に法律の線を越えてしまいます。その様な事にならない様に、現場に違法行為に関する知識の徹底を行ってもらいたいものです。
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