個人の情報を守るべきか、それとも人の命を守るべきか

個人情報を守るための活動は、いまやネットリテラシーにおける基本的知識となっています。インターネットをやるならば、自分の情報を表に出さない。そして他者の情報を持っている人間は、その情報もインターネット上に開示しないのが基本です。

ただ、個人情報保護の流れはインターネット上だけではなく、現実の生活においてこそ激しくなってきています。

その結果、本来救えたはずの人間が、無残にも遺体で発見されることがあることもあるのです。

そこで今回は、個人情報保護の流れが生み出したデメリットについて、探偵としての目線から詳しく解説させて頂きます。

情報開示を拒まれる行方不明者

行方不明者の捜索は、いかに早く行方不明者の情報を手に入れるかが重要です。そのためなら、契約が纏まる前にすでに行方不明者のビラを刷りはじめ、契約がまとまった段階から即座に現場に移動できるように準備することすら当たり前です。

探偵が調査を急ぐ理由は、行方不明者の生存率の低さにあります。

行方不明者の生存率は、行方不明になった後から7日間に達するまでに一気に低下していきます。しかも年齢が上がるにつれて生存率が低下していくので、中高年の行方不明者となれば、ほんの僅かな出遅れのせいで行方不明者を遺体で発見する羽目になります。

しかし、行方不明者の捜索のために聞き込みを行っていると、最近は情報開示を拒まれるケースが多くなってきたと言うのです。

企業からの情報提供は望めない

相手がたとえ行方不明者であろうと、企業側はそう簡単に情報を出しません。

もしも企業側が持っている情報は重要でなければ良いのですが、行方不明者が最後に働いていた可能性がある派遣業者や、カードの使用履歴があると思われるレンタルビデオ店やクレジットカード会社、そして一時的な宿泊先となる機会の多いインターネットカフェも、個人情報の取り扱いに厳しければ、情報開示はそう簡単には行きません。

こんな時は、最終手段として依頼者であるご家族を連れて目的の企業に訪れて情報を見せてもらいますが、そんな事をしている間に行方不明者が命が奪われるケースもありました。

認知症患者の行方不明

個人情報の開示を拒まれたせいで発見が遅れる対象者は認知症患者に多いです。

認知症患者が行方不明になるケースは2種類あります。

認知症ゆえの失踪

こちらの場合は、自殺率は低いものの事故にあう可能性はかなり高いです。

また、自力で家に戻ることはほぼ不可能なので、発見されるまで延々と彷徨い続けます。

認知症を苦にした失踪

初期の認知症の場合、自身が認知症である自覚をはっきりと持っているケースが多いと言います。

しかし、それほど辛いことはありません。自分自身が認知症になり、妻や子供たちに苦労を掛けるならいっその事死んだ方がましだと、自殺するために家を離れた可能性が大変濃厚です。

しかし、これだけ危険な行方不明者であっても、情報の開示を拒まれることは珍しくありません。

それどころか、各市町村が行方不明者の情報をインターネット上に開示することを躊躇います。

個人情報の開示は難しい

個人情報保護法には「生命、身体、または財産を保護する必要がある場合には情報を開示できる」という規定が存在します。

所が、国や市町村、そして企業などが行方不明者の捜索のために情報を開示できないのには、個人情報保護法に関する知識足りなかったり、情報開示に関するガイドラインが定められていないのが原因と言われています。

しかし、静岡県では2015年2月に行方不明者の捜索に関するガイドラインを制定。本人の同意が無くとも、条例規定に基づけば本人からの同意を得たものとみなし、氏名や写真、そして詳細プロフィールなどをインターネット上に公開することにしたのです。

その結果、静岡県ではHP解説からすでに5名もの行方不明者を救っており、各自治体からもその効果を期待されています。

行方不明者捜索のため個人情報開示のガイドラインをまとめるべき

行方不明者の捜索のためにはどうしても個人情報を公にしてもらわなくてはなりません。これが浮気調査や所在調査など人の生命に危険が及ばない調査であれば、決して情報の開示は求めません。

しかし。これが人名に関わる行方調査であるからこそ、やはり国が本人の承諾が無くとも個人情報を開示できるガイドラインをまとめてもらう必要があります。

また、本にの家族が情報開示を訴えても情報が貰えないケースもあります。その場合は、命の危険に関わることを訴えても理解してもらえないので、行方不明者捜索のために情報開示を願うための書類を警察などから発行してもらえれば最適かもしれません。

個人情報の保護によって奪われる命もある

個人情報の保護によって、人々は自らのプライバシーはおろか、その生命すら守っていると言っても過言ではありません。

しかしその一方で、個人情報が開示されないせいで失った命があることも、これを読む貴方には是非知ってもらいたいのです。

私個人が体験した事例としては、かつて認知症となった老人の行方調査が典型的な例でした。

この調査では県も行方不明者の情報公開は行わず、警察でも対応しきれなかった為に探偵事務所に依頼されたのですが、その後の調査でも個人情報保護法がネックとなり、なかなか捜査が進展しませんでした。

しかし、調査のかいがあって、なんとか行方不明者を目視で確認できる距離まで迫れたものの、その老人は私の目の前で柵を乗り越え、崖の下へと転落してしまいました。

これが認知症による事故であったのか、それとも自殺であったのかは未だに分かりません。

しかし、もしも県が情報公開に踏み切り、さらには行方不明者のための個人情報の公開に積極的であってくれたらな、この老人の命は救えたのかもしれません。

距離にして、およそ200メートル。

車で移動していた私がその間を走るのには、10秒も掛からないでしょう。

その僅かな秒数の差で救えない命があることを、個人情報やそれに携わる仕事の方々には是非ともご理解頂きたいです。

まとめ

個人情報保護法に関する改正が行われましたが、未だに行方不明者の捜索に有利なガイドラインの制定は進んでいません。

しかし、そんな中でも探偵は諦めずに捜索活動を行っています。

また、個人情報保護法があっても、ご理解頂ける企業の皆さまからは情報提供を頂けています。行方不明者の発見は命が掛かっていますので、是非とも皆様のご協力をお願いします。