実録浮気調査:ストーカーからの依頼

探偵社に依頼してくる方の大半は、ごくごく普通の人ばかりです。専業主婦からサラリーマン、魚屋さんに農家の方から漁師まで、とにかく幅広い方からの依頼が毎日の様にやってきます。

ただ、そんな中には、時折危険な依頼者が混ざりこんでいることもあります。しかし、彼らは常に「私は危険ですよ」なんて示しながら行動する優しさを持ち合わせてはいません。まるで自らが他の依頼者と変わらいとでも言う様に、「擬態」という言葉が相応しいほど完璧なウソを作り上げて探偵社にやってきます。

依頼内容

今回ご紹介する依頼者はOさん(会社員、30代、男性)です。

Oさんは都内の大手企業に勤務するエリートサラリーマン。数年前に結婚し、マンションも購入。お子さんも2人居て、とても幸せな毎日を暮らしていました。

しかし、最近になり奥さんに不信な行動が見られることが分かった為、その調査を依頼するため探偵社に訪れたのです。

 

相談内容

Oさんが言うには、奥さんに浮気の兆候があったものの、それを確かめるために自分で調査をする前に、奥さん側から一方的に別居を言い出されたそうでした。そのため、浮気の可能性について分かるものは何もなく、浮気相手がどんな人物なのかも不明です。

しかし、奥さんは間違いなく浮気をしていると言い張るOさんに不信感を感じたものの、その権幕に押されて相談員が契約を了承しました。

ただ、調査部(大手探偵社えは、調査員の部署をこう呼ぶことが多い)では、この依頼に対して疑問を持つ声が多かったのを覚えています。特に現場に出ることになった私ともう一人の調査員は、この浮気調査の次の点について怪しいと感じていました。

 

別居先の奥さんの住所が不明

この調査では、奥さんの勤務先は判明していたものの、その別居先についてまで依頼者から情報が渡されていませんでした。

この点について相談員に確認しても「別居先について依頼者は知らされていないだけ」との話でした。

確かに、夫婦問題があまりにも悪化した場合、その別居先について配偶者に知らせないことは珍しくありません。

ただ、今回の様に浮気の事実が浮上していない段階から、いきなり別居先も知らせず別れることはとても珍しいです。

 

旦那さんの詳しい調査指示

浮気調査は探偵社側が調査の責任を負いますが、その詳しい調査内容については、依頼者再度からの要望が入り込むこともあります。

今回のケースでは、依頼者から奥さんの別居先の住所と・同居男性の有無・さらに子供が登校する学校についても調べて欲しい旨が指示書に記されていました。

ただ、私の目から見ればこれは浮気調査の範疇を超えた依頼内容です。特に子供の登校先に学校についてまで知らないというのは妙な話です。

普通、別居したとしても子供に会うことは出来ますし、夫婦間の話し合いもあるので、そこで学校の話も当然の如く登場します。

 

なのにもかかわらず、この依頼者は投稿先について知りませんでした。この点から、今回の依頼者には次の様な裏の目的があると推察できました。

 

DV加害者の可能性

近年、DV被害の届け出は増加傾向にありますが、それに伴って、DV加害者から逃げるためにシェルターを活用する人も増えて来ました。

シェルターとは、DV被害者を守るために運営されている保護施設の事です。ここに入ると、加害者にはその後の行き先について知らされず、連絡を取ることも不可能になります。

しかし、DV加害者は被害者を執拗に追い詰める事も珍しくありません。その行先を知るためには手段を択ばず、ストカー犯に変貌してしまう人も多いのです。

ただ、この可能性が考慮できても、探偵社側から相手がDV加害者であるか確認する方法はありません。もしアメリカの様に犯罪者データベースにアクセスし、依頼者の前歴について調べる事が可能なら回避も出来ますが、それが出来ない以上、依頼者の素性について探偵が調べることは不可能なのです。

 

調査開始

今回の調査は、まずは対象者の勤務先から帰宅先を割り出す作業からスタートしました。

勤務先から自宅の割り出しはそう難しくはありません。張り込みをしながら対象者が出てくる姿を確認すれば終わり・・・のはずだったのですが、幾ら待っても対象者は勤務先から出てこず、その日の調査は終了しました。

この日は偶然休みだったのか?不思議に思い、次の調査に入る前に勤務先を確認してみると、すでに対象者が退職していた事実が判明したのです。

これは普通ではまずありえません。自宅も、子供の登校先を隠し、さらに勤務先についても確認出来ないというのは異常です。完全に危険を察知し、旦那さんから逃げているものとしか思えませんでした。

 

そこで、改めて依頼者にこの事実を話し、現在も奥さんと結婚をしている事実を証明してもらうため、戸籍謄本か住民票の提出を求めてみました。

すると、この依頼者の態度は急変、担当していた相談員に辛辣な言葉を投げかけたあと「もう二度と依頼はしない!」といって、面談場所を後にしてしまったとの事です。

 

調査結果

この調査の結果、依頼者が本当にDV加害者であったのかはっきりとはしませんでした。何せ、探偵には依頼者がDV加害者であるかを調べる方法が無いのです。

ただ、上記の通り、怪しい依頼者には必要な書類の提示を求めるなどしなければ、今度は探偵がDV加害者の代わりに調査を行ってしまう事になります。

探偵はクリーンな仕事ではありませんが、かといってどんな依頼でも受ける犯罪者でもありません。だからこそ、依頼者からの信用を大切するため、多くの探偵社が犯罪者やその予備軍となるような依頼者からの要望に応えることの無い様に注意を払っています。

 

しかし、やはりそこには限界もあります。こちらが相手が犯罪者であると完璧に知ることは出来ません。また、書類の提出を断り、探偵社を後にすれば、探偵が依頼者を追うこともありません。

こうした実情があることを分かって頂ければ、探偵者に依頼される人の中に、身分証の提示などを求められて困惑される事も少なくなると考えます。多くの依頼者の信用を裏切らないためには、出来る限りその依頼がクリーンである証明をして頂く必要があるのです。